かつては春夏秋冬、四季折々の風情があった日本も、
昨今は夏冬・瞬間的な夏冬的な気候に辟易(へきえき)することが多いのですが、
そういった意味で今が一番と感じる方も多いはず。
ということで、貴重な季節を満喫できる滋賀のスポットをご紹介いたします。
オーミー!フォーユー!の企画としては初めて足を踏み入れる湖東地方。
文字通り琵琶湖の東に位置し、東近江市、愛知郡愛荘町、犬上郡甲良町にまたがる滋賀県の東部で、
ひと山越えれば三重県に接するという地域です。
そして三山とは、 南から行くと百済寺(ひゃくさいじ)のある釈迦山(しゃかさん)、
金剛輪寺(こんごうりんじ)のある松峯山(しょうほうざん)、
西明寺(さいみょうじ)のある龍應山(りゅうおうざん)の三つの山々の総称です。
いずれの山も美しい自然に恵まれ、それぞれのお寺も多数の国宝や重要文化財を所有し、
見事な日本式庭園を眺めることができます。
今回は春に訪れましたが、実は紅葉の名所として知られる名所・名刹なのです。
それではまず、百済寺からご紹介いたしましょう。
JR琵琶湖線・近江八幡駅から近江鉄道に乗り継ぎ八日市駅で下車し、時間をかけてたどり着きました。
聖徳太子創建との伝承もあるお寺で、百済寺という名称自体が、
その当時の渡来人のためのお寺ではなかったのかとも考えられますが、
平安時代には比叡山・延暦寺の勢力下の天台宗で、近江の大寺院として栄えました。
しかし、室町時代に二度の火災、さらには安土桃山時代にあの織田信長の焼き討ちに合い、
ほとんどの伽藍(がらん)が焼失したそうです。
その後、江戸時代に入り、次々と伽藍が復興し現在に至っています。
まずは通用門から上がり境内に入ります。
南庭と呼ばれるお庭が広がり、そこに本坊・喜見院(きけんいん)、不動堂という二つのお堂が整然と並んでいます。
そして、この本坊の庭園が別名“天下遠望の名園”とされる見事な日本式庭園で、
インバウンドでにぎわう京都の寺社仏閣のそれをも圧倒するかのような美しさと何よりの静けさで、
しばし時の流れを忘れさせ、訪れる人を癒してくれます。
お堂には猿除け?の虎のおもちゃや鯉(コイ)のえさなど様々な演出もあり、
鯉の数の多さには仰天しました。
餌をまいたら来るわ!来るわ!の大盛況でした。
そんな鯉たちとのやり取りも良し、縁側に腰掛けて庭を見つめるのも良しです。
この本坊・喜見院を出て、正面にあるのが表門。
この門をくぐると表参道で、山上の仁王門、本堂に続く長い長い石段があります。
かなりの勾配で、前を見て歩くより脇の森の樹々を眺めながら、少しずつゆっくりと歩くことをお勧めしますが、
なだら坂と呼ばれる石段のない脇道もありますので、少々時間は余分にかかりますがご安心を。
約10分ほど登り進み、たどり着いたのが仁王門。江戸時代に再建されたものですが、まず目を引くのが、
長さ約3メートルの大きな草鞋(わらじ)が門に吊るされていることです。
これは仁王門に安置されている、
お寺を守る守護神である仁王様(金剛像・力士像の二体)が履いておられる草鞋を模したものだそうで、
仁王様が夜の休息の際にはこの草鞋をお脱ぎになるという伝承からこうして吊るされるようになったとか。
江戸時代の頃から、参拝客はこの草鞋に健脚と長寿の“願”を掛けるようになったそうで、今に至ります。
仁王門からさらに石段を上がり、ようやく本堂に着きました。1650年に再建された、
国の重要文化財にも指定されたお堂の中には、十一面観音像や聖観音坐像が安置され、
鐘楼と並んだ光景は自然との見事な調和の風景をお楽しみいただけます。
このお堂はNHKの朝ドラ“ブギウギ”や映画のロケにもたびたび使用された、話題の場所でもありました。
そしてこの辺りの参道脇に咲く三椏(別名・ミツマタ)の花の花びらにそっと触れて、
香りを楽しむというのも春ならではの嗜好ですが、ご利益と金運があるとも伝えられているそうです。
山を足早に下って湖東三山、最初の寺である百済寺を後にして、
次なる山は愛知郡愛荘町にある松峯山(しょうほうざん)、金剛輪寺。北に向けて出発です。
車を利用すれば15分程度ですが、歩くとなると小一時間はかかります。
健脚の方はハイキングにチャレンジして、大草鞋に“願”を掛けてください。
ということで、私はテクテクと歩き松峯山のふもとに到着。
こちらも一見して山寺で、百済寺とほぼ同じような規模の山のよう。
果たして登りはどれほどきついのか(汗)と思いつつ参詣いたします。
こちらの金剛輪寺は山門に特徴があり、伽藍正面の黒門、参道を歩いて数分で左手に見える赤門、
そこから難所の参道を上り左手にある白門。
そして、この寺の際立つ魅力の一つでもある千躰地蔵を祀(まつ)る参道を上りきった所にある山上の二天門、
以上四つの山門です。
まずは黒門を通り、参道左手にある赤門を拝見し、さらに白門へと進みます。
このお寺は、奈良時代に時の聖武天皇の勅願寺として、あの高名な僧、行基が創建したとされ、
ご本尊の聖観世音菩薩像も、その行基の作とされています。
さらに平安時代に天台宗のお寺として栄え今に続くそうですが、参道途中に阿弥陀如来が祀られた、
18世紀後半に建立された小さなお堂“西谷堂”を右手に見ながら、さらに黒門からすぐの受付所に案内のあった春の風物、
猩々袴(ショウジョウバカマ)を参道両脇を見て探しつつ、白門をくぐり名高い名勝庭園に向かおうとしたのですが、
ここまでの歩き疲れによる体力の限界を感じ、参道を右手に曲がった先にある“豆の木茶屋”という名のお食事処で休憩。
まずは腹ごしらえをして、それからさらに深く入山しようという結論に達しました。
森の中にポツンと建つ豆の木茶屋、静かで落ち着いた雰囲気。ひと息つくにはもってこいの場所でした。
そして、いただいたのはもちろん名物の“僧兵うどん”です。
山菜の天ぷらがふんだんに盛られた、関西風味のアッサリ出汁とコシのやわらかい、
これまた関西風のうどんの見事なマリアージュ。
山寺のこの自然に包まれた中で、なんとも贅沢な昼食にありつけた、これぞご利益と感謝しつつ腹ごしらえを終えて、
いざ参拝!!!となるのですが、その後の金剛輪寺の絶景の魅力は次回にお伝えすることにいたします。
ご期待ください。
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