オーミー!フォーユー!
腹ごしらえも終えて、エネルギーチャージも整い、いざ散策開始です。黒門をくぐり、赤門を左手に見て上った先の左手に三つ目の山門、白門が有ります。“湖東三山まん中のお寺”金剛輪寺の境内にあって、国の名勝としても名高い庭園に通じる入り口となります。門を過ぎるとすぐ正面にあるのが本坊“明寿院”(みょうじゅいん)、その右手奥に建つのが江戸時代末期に創られた茶室、水雲閣です。この二つのお堂を囲むかのように広がる庭園が、池泉(ちせん)回遊式庭園と呼ばれる庭造りのひとつの技法で、文字通り池の周りをぐるりと歩くためのお庭で、安土桃山時代から江戸時代中期にかけて成熟した造園技法が編み出した“名勝庭園”です。京都の桂離宮や岡山の後楽園等がその形式としてはお馴染みで、池を作りその周囲に小道を巡らせ、さらに築山や石を配して、お休み処として茶室を設(しつら)えるという日本式庭園の集大成のような造園法です。確かに、その配置がひと目でわかる雅なお庭ですね。
中世の三時代(桃山時代~江戸時代初期~江戸時代中期)にかけて造られた三つの庭園、三つの池からなる名勝庭園。南庭、北庭、西庭にそれぞれ池を配し、それを結んで池の周りを歩きながら出島、石橋、石組みを見てくつろげます。水雲閣を囲む自然と伝統的な作庭手法の調和は見事で、日本文化の素晴らしさを感じずにはいられません。
こちらは明寿院のお部屋です。建物は1977年に焼失し、その後再建されたものなのですが、整然として広々とした和室には、ほのかない草の香りが漂います。日本建築の粋を感じます。そして、お部屋からはそれぞれ、北庭、南庭を眺められます。腰を下ろしてぼんやりと庭を眺めて、しばしのタイムトリップ!!!お部屋の奥から眺めるお庭は、まさに額縁庭園です。静けさの中で、ホント心身ともに癒されますね~
そして金剛輪寺参詣はここからが山場、難所です。百済寺の石段は、それはそれは急ではありましたが、距離にして、登りにして、その倍はあるのではないかという、本堂に続く参道を歩きます。確かに険しいのですが、この延々と続く参道こそが金剛輪寺の名所、名跡である千躰地蔵(せんたいじぞう)を拝みながらの登道なのです。黒門から本堂までは500メートルほどの道程なのだそうですが、この険しい登りはその倍の距離を感じずにはいられません。名勝庭園でくつろげて良かった!!!そして二千体はあろうといわれている、高さ50センチほどの、整然と並んだお地蔵様を拝み、見渡しながら登る道すがらは、やはり静けさと何とも言えない風情があり、霊験あらたかな気持ちが足の疲れを癒してくれます。途中、地蔵堂に立ち寄りながら、ひたすら登り続けました。
そして小休止を挟みつつ30分ほど歩き続けて、ようやく本堂への入り口である、重要文化財、室町時代に創建の二天門に辿り着きました。まだひと登りが必要(-_-;)。でも下を見下ろし、よくぞここまで登り切ったと、見守っていただいたお地蔵さまに感謝!!感謝です。
(画像17・18)
二天門は、前回でご紹介した百済寺の仁王門と同じような作りですが、こちらは室町時代のもので、目を引くのはやはり、左右に括りつけられた大草鞋です。そして向かって右に増長天、左に持国天が祀られています。足の疲れがひどくならないように、しっかりと草鞋に願を掛けました。
その二天門を潜ると、正面にどっしりと構えるのが国宝である本堂大悲閣。鎌倉時代に創建されたもので、円柱は総檜だそうです。この金剛輪寺は百済寺同様に織田信長の焼き討ちに遭ったのですが、山奥にあり、さらに当時の僧侶の皆さんの作業によりこの本堂、三重塔、そして二天門は戦火を免れたのです。
本堂の左には室町時代に建立された三重塔がそびえます。周囲に茂った樹木、特に紅葉の時期にはそれらが葉を広げて、三重塔の全貌がなかなか見づらいらしいのですが、季節的には良い時期でした。江戸時代に火災によって塔の三重部分が焼失、長きにわたって二重の塔だったものを1978年に3年の工事を経て再建され、現在の姿、三重塔となっています。
(画像22・23)
その三重塔の東、狭い山脇に立ち、位置的にカメラで全体を収めるのが難しい、壮大なお堂が本堂(大悲閣)です。堂内には、あの行墓菩薩の彫刀によるとされる聖観世音菩薩(秘仏とされています)をはじめとする多くの仏像が整然と安置されています。
秋には紅葉で辺り一面が覆われ、伽藍が映えるそうですが、この時期は建物を眺めやすく、それはそれで好都合でした。ここまであくせく登った甲斐があったというものですね。帰路の下りも千躰地蔵を拝み、眺めながら参道を後にしました。この後はさらに北に進んで、湖東三山最後の訪問地、龍應山西明寺を目指します。
時折り往来する東海道新幹線の高架を左手に見ながら、琵琶湖からは東側の山裾の道と高速道路下を歩くこと40分で湖東三山最北の龍應山西明寺に到着です。最後のお寺ということで、心配の種は体力がどこまで持つかが心配でしたが、幸いにもここ西明寺は小高い山の中腹に在り、金剛輪寺のような奥まった山寺ではないようでホッとしながら中門をくぐりました。
承和元年(834年)に開創されたとされ、湖東三山の中では最もなだらかで、ゆったりとした敷地のお寺という印象です。そして境内には数多くの文化財を有する平安時代からの由緒あるお寺なのです。
門の向こうには寺の自然を最大限に活かしながら、金剛輪寺の庭園と共通の庭園技法である池泉回遊式庭園(ちせんかいゆうしきていえん)の名勝庭園(蓬莱庭)が広がります。
庭の中心に大きな池を配し、その池に小島を造り、池の周囲には築山、名石を配するという伝統的なお庭は、百済寺、金剛輪寺と同様の美しさですが、池を囲む小高い丘?築山が真緑の苔で覆われ、この緑色と池の雅なコントラスト。これに日差しが加わり絶妙な絵柄となるのは。湖東三山の中でも西明寺ならではの風景ではないでしょうか。特に苔の美しさを堪能されたい方にはお勧めのお庭です。
しばし、名勝庭園でぼんやりとした時を過ごし、なだらかなスロープの石段を上ると重要文化財である二天門。文字通り持国天、増長天の二天が両脇にそびえたつ御門で、当然、大草履も吊るされていました。門をくぐれば、桧皮葺きでくぎを使わずに建造された本堂、右には三重塔が構えます。この一帯の伽藍も織田信長の焼き討ちを免れ、現代にその姿を残す鎌倉時代の建造物なのですが、実はこの本堂は、明治時代に施行された法律によって国宝第一号に指定された由緒あるお堂なのです。その後に三重塔も国宝に指定され今に至っています。
堂内の撮影は禁止されていますが、中には金色のお厨子に秘仏として祀られる薬師如来立像を中心に、十二神将、日光・月光菩薩など、堂内に所狭しと十九の仏像が安置され、荘厳且つ、こちらも霊験あらたかな空気に包まれています。瞑想に浸るにはうってつけの空間。ぜひ一度お参りください。
No. | 発行日 | タイトル |
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